ドローンは、空撮だけでなく測量、農業利用、災害調査等にも用いられ、とても活用範囲が広い技術です。
ただ、良い面ばかりアピールされていますが、危険性があることも十分に理解して利用する必要があります。
空撮の分野に限って言えば、あまり事故のことについて触れている業者が少ないのも事実です。
空撮はお客様の理解と協力があって初めて安全性を高められる業務だと思います。
悪天候や地理的条件が悪い場合、ドローンは操作不能となり墜落します。
そう言ったリスクがある事を十分にお客様にご理解を頂いた上で、安全対策を施すのが空撮のプロとしてあるべき姿だと思います。
少しでも危険を感じたら飛行させない決断が必要です。

毎年、国交省よりドローンによる事故報告があった事案が報告されています。
2017年度に発生した事案を以下に分類してみました。

事故報告は全体で61件で内3件は、飛行空域にドローンが侵入した事案です。
150m以上の空域か空港近辺で無断飛行させていたケースです。

残りの58件が墜落に至った事案です。

■利用者区分
・個人利用26件
・業務利用32件

利用者全体としては個人の方が圧倒的に多いはずですが、件数が少ないのは報告自体がされていないためだと思われます。
われわれ空撮業者はたいてい墜落時に備えて保険に加入しています。
その際、機体のシリアル番号等も保険会社に提出します。
その為、万が一墜落があった場合に、その機体の持ち主は特定可能です。
一方で個人利用の場合には、保険に未加入の人が多いため、万が一墜落してもそのまま放置してしまう場合も多いですし、国交省へ報告する仕組み自体を知らないケースも考えられます。
業務利用の32件の中には農業利用や測量等も含まれますが、純粋の空撮業者の起こした事故は15件となっています。
その他、行政機関、建築関係、農業関係、測量関係が17件となっています。
この件数を多いと考えるか少ないと考えるかですが、個人的には多いと思っています。
空撮業者の事故だけでも毎月1件以上発生しているわけですから。

■機体区分
・小型機2件
・中型機32件
・大型機24件

単純に件数だけで比較すると、小型<大型<中型となっていますが、ドローンの流通台数は小型機、中型機が圧倒的に多いです。
そこから考えると大型機の24件は、個人的にはとても多いと感じています。
大型機は中型機や小型機に比べて、より操作に熟練が求められます。
また、中型機や小型機に比べて安全性を考慮して作られていますが、ユーザー数が圧倒的に少ないために、ドローンのプログラムや機体に設計上の不良があっても、メーカーの対応が遅れがちです。
大型機は機体に一眼レフカメラを搭載できる等、魅力は大きいですが、一方で危険度も一番高くなっています。
どのような空撮映像を求めるかにもよりますが、画質的に問題がないのであればPhantom等の中型機やSPARK等の小型機で撮影するのが一番安全性も高く、撮影コストも抑える事が可能です。

■操縦経験
・10時間未満 3件
・10~30時間 24件
・30~100時間 16件
・101時間以上 16件

この件数を見ると、初心者、ベテラン関係なく、事故が発生しています。
101時間以上の16件の中には201時間以上の超ベテランが5件含まれています。
この操縦時間ですが、恐らく純粋に飛行をしていた時間だと思われます。
9割以上の空撮現場で使われているDJI社のドローンであれば、操作アプリにフライトレコードが記録されます。
そこには、これまで飛行したトータル時間が表示されています。
恐らく、その数字が国交省には報告されているので、純粋に飛行をしていた累計時間になります。
1現場の飛行時間は、短ければ1フライト15分程、長くてもほとんどは1時間以内でしょう。
平均で30分とすると、10時間で20件、100時間で200件ほどの現場経験をしている計算になります。
勿論、この操縦経験には練習や趣味での飛行時間も含まれているはずなので、全てが現場で飛行した時間ではないでしょう。
この統計を見て分かるのは、墜落については初心者からベテランまで誰にでも起こるトラブルだということです。
くれぐれも、無理を伴う空撮は避けるようにして下さい。

■墜落原因
・操作ミス 9件
・電波異常 9件
・強風 7件
・機器トラブル 6件
・GPS異常 5件
・周囲の確認不足 5件
・バッテリー切れ 4件
・自作機の故障 2件
・鳥との接触 2件
・雨天飛行 1件
・その他 2件
・不明 6件

複数の要因が複合されている事故は、一番可能性が高いと思われる区分に分類しました。

操作ミスは物件に近付き過ぎたり目測を誤ったり、人為的ミスだと思われるものをカウントしました。初心者からベテランまで発生しています。
ほとんどが十分なロケハンを行っていれば防げるトラブルです。
電波異常は巨大建造物の陰を飛行させたり、携帯基地局の近くを飛ばしたり、遠方まで飛ばし過ぎたりで発生しています。
ほとんどが十分なロケハンを行っていれば防げるトラブルです。
強風は、そもそも風が強い中を飛行させてしまったり、急な突風等で機体があおられたりが含まれます。
通常はドローン本体の風速センサーで察知可能で、合わせて飛行前に風速計で計測することでリスクを低減します。
機器トラブルは、原因不明の機器の異常です。センサー類やその他の通信異常等が含まれます。
これは日頃の定期メンテナンスと、飛行前のセンサー類の確認である程度は防止可能です。
GPS異常は、文字通り位置情報に異常が発生してドローンを帰還させる事が出来なくなるトラブルです。山間部等、見通しが悪い場所等でよく発生します。
経験を積んだ操縦者であれば、目視飛行内ならGPSがなくても操縦可能です。機器のGPSを過信しないことと、日ごろのトレーニングによりリスクを低減します。
周囲の確認不足は、樹木や電線に接触したりで発生します。
十分なロケハンを行っていれば防げるトラブルです。
バッテリー切れは、1バッテリーの飛行可能時間のギリギリまで飛行させ過ぎて、機体を戻せなくなってしまうトラブルです。
余裕を持って帰還させることで防げるトラブルです。
自作機の故障は、ラジコン歴が長いパイロットによく見られるトラブルです。
マルチコプターの仕組みをよく分かっていても、ドローンメーカーのエンジニア以上の機体は作れません。自作機は飛ばさないことで防止出来ます。
その他、鳥との接触雨天飛行等も、避けることが出来るトラブルです。完全な人為的ミスです。

いかがでしたでしょうか。
機器トラブルや原因不明のトラブル等、一部、避けようがない事故もありますが、大半は事前にロケハンをしたり無理な飛行をしないことで避けられる事故です。

befreeでは、他社の事例を研究することで、自身の安全飛行に活かすと同時に、お客様への啓蒙活動を行っています。
弊所にご依頼を頂くかどうかに関わらず、空撮を業者に依頼する場合は、事故のないように十分にご注意頂ければと思います。